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JAL・ANAは下地島空港から撤退。高精度なシミュレーターの導入で実機訓練が必要なくなり、下地島空港は役目を終えた・・・と思われている方は少なくない。機種によってはシミュレーターで最終チェックを行い、実機で飛ぶ必要がなくなったのは事実。しかし、下地島空港撤退後、JALはグアムで、ANAは中部国際空港でタッチアンドゴーの訓練を行っている。ANAの場合、中部国際空港で訓練を終えた機体はそのまま定期便として使用できる。訓練のために遠くまで飛ぶ必要がなく、燃料費も安く済む。セントレア以外に長崎空港での訓練も計画しているとのこと。
中部国際空港のANA訓練スケジュール
下地島空港ランウエイ17エンド。訓練中のJAL・B777、2007年撮影。
JALの場合、訓練のために機体を東京からグアムにフェリーすると、東京-グアムは片道2500km、東京-下地島の距離は片道2000km、ではなぜ、下地島ではなく、遠いグアムで訓練をすることになったのか?
グアムは一時、観光客が減り、JALの定期便も減便したことがあった。その時、グアム空港は航空会社誘致のために着陸料を無料化。結果、離れた航空会社は戻り、観光客も増加に転じた。現在、JALとグアム空港の間でどのような契約が結ばれているかは不明だが、訓練を行うにあたって低コストであることは容易に想像できる。
以下は2013年の地元紙の記事から抜粋。
「宮古島市の下地敏彦市長は東京にある日本航空の本社を訪ね、下地島空港での実機訓練再開を要請した。市長から要請を受けたJALの日岡裕之執行役員総務本部長は、下地島空港の建設経緯から見て訓練から撤退したことは心苦しいとしながらも、調整の結果、使用料負担がグアムと変わらない状況となった場合には、下地島空港での訓練再開を検討しても良いとの考えを示した」(宮古毎日新聞2013年10月19日)
下地島空港の運営費はJAL・ANAが年間1億円ずつ負担していた。これは下地島空港がJAL・ANAの訓練のためだけに建設された空港だったからである。撤退する時はANAは使わない翌年の空港運営費を、JALは違約金を沖縄県に支払っている。ハブ空港など世界で拠点となる空港間での競争は激化している。下地島空港からJAL・ANAが撤退した理由は、シミュレーターが原因ではなく、航空会社が沖縄県に支払う経費が高額だったためであり、下地島空港が空港間のコスト競争に敗北したからである。
その後、下地島空港の利用計画として、新たに旅客ターミナルを建設し、LCCを誘致するという案が三菱地所から提案された。計画が発表されたのは2015年だったが、未だ計画は実現はしていない。
2017年1月18日、宮古島市長選挙の候補応援で伊良部島を訪れた沖縄県の翁長知事は2,3か月以内に下地島空港の再利用案を始動させると明言。しかし翁長知事の推した市長候補は落選した。果たして下地島空港の再利用計画はスタートするのか? 沖縄県が空港使用料を大幅に下げれば、JAL・ANAが下地島空港に戻ってくる可能性はゼロではないと思われる。
旧伊良部町役場に建つ那覇-下地島線の就航記念碑
(取材・イタリアファイブネットワーク 東京支局 / 2017・1・23)