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下地島空港 最新ニュース



~下地島空港17エンド通行止と航空法について ~
 (取材・イタリアファイブネットワーク 東京支局 / 2018・12・23)

下地島空港17エンド、かつては航空ファンの聖地とも呼ばれ、タッチアンドゴー訓練を行う大型旅客機の写真を撮るファンで賑わった。JAL・ANAの撤退後は、"インスタ映え"のスポットとしても有名である。
この17エンドへと向かう空港の周回道路の通行止めが検討されているというニュースがあった。ターミナルが開業して定期便が就航すると、17エンドへの見物客、車の通行量が増えて危険であり、その対策として一方通行、または通行止を検討するという記事だった。(宮古毎日新聞 2018年11月7日)





下地島空港の周回道路



道路は車がすれ違える広さはあるが、大型バスも通ることから、無秩序に駐車している車があると稀に渋滞することもある。夏場のピークで交通量は1時間に120台程度、通常は1時間に30台から50台程度で車が多いと呼べる状況ではない。ではなぜ閉鎖をするのか。空港周回道路の通行止の噂は昔から何度となく出ている。周回道路は一般道ではなく、空港管理道路である。管理をするのは沖縄県土木建築部の下地島空港管理事務所。管理をする側の立場としては、交通事故など不測の事態を考慮すれば、閉鎖してしまうのが最も安全で、管理しやすい。

「現状のままが望ましいが、最悪でも一方通行で」(宮古島観光協会)
「絶対反対。通行止などあり得ない措置」(伊良部島商工会)
これに対し、下地島空港管理事務所は、
「現時点では未定、検討中です」とのこと。




下地島空港、17エンド。バニラエアの訓練


17エンド西側のビーチと航空局の飛行検査機



伊良部島の住民が下地島空港管理事務所を訪ねたところ、空港周回道路を大型バスが通ると高さの制限で航空法に抵触する可能性があるため、通行止を検討中との説明を受けたという。
下地島空港では今も毎日のように離着陸訓練が行われており、観光バスが周回道路を通行している。かつては南西航空の定期便やJAL・ANAの旅客機が頻繁に離着陸を繰り返していたが、当時は航空法に抵触するという話は聞かれなかった。問題となっているのは、計器着陸装置の電波の通り道。もうひとつは進入表面と呼ばれる高さ制限。
航空機が着陸する際、電波が航空機に向かって放たれているが、その電波の通り道に物体があるの好ましくない。自動車は移動物なので、その場に留まらない限りは障害にならないが、着陸時は通行車両がまったくない状態が望ましい。




計器着陸装置の電波の通り道、フェンスが低くなっている。


計器着陸装置の電波の通り道と進入表面



もうひとつは、進入表面と呼ばれる制限。着陸機が滑走路に降りる際、そのコースには障害物があってはならない。例えば、故障や事故で大型バスが17エンドの進入表面で止まってしまうと、バスの屋根部分が数センチから10センチほど、高さ制限にひっかかる可能性がある。規定に従って計算をすると、滑走路末端から周回道路までの距離は180メートル、進入表面は50分の1の傾斜角度、周回道路のフェンスで3.6m以上、道路の海側で3.7m以上の物体があれば、航空法に抵触する。観光バスの標準的な車高は3.5mから3.7m、車種によって異なるので、実際に通行しているバスの車高を計測する必要があるだろう。




タッチアンドゴー訓練中の海上保安庁の航空機、
進入表面の下に観光バスが駐車している。



航空機の離着陸を管轄する国土交通省航空局に問い合わせたところ、以下の回答が得られた。
「現状、航空法で違反になることはなく、下地島空港に問題があるとは聞いていない。例えば、事故や故障で自動車が立ち往生して17エンドを塞いでしまった場合など、下地島空港管理事務所は安全面を考え、通行止を検討しているのではないか。ただ、人気の観光地なので閉めてしまうのも、どうだろうか。いずれにしても沖縄県が判断することである」(国土交通省大阪航空局)

また航空法に詳しい関係者の話によると、「進入表面以外でも高さ制限に抵触している場所は多く存在しているが、空港管理者が把握していれば問題ないとされている。これは下地島空港に限らず、どこの空港でも同じ。ただ、国際線の定期便が就航する時は、より厳格な航空法の適用が求められるので車両の通行が問題になるかもしれない」




厳格に航空法を適用した場合、17エンドから見える農業用の給水塔は
高さ制限を超えている。本来であれば撤去しなければならない。



「島の美しい場所を立入禁止にしてしまうのは悲しいことです。沖縄県は通行止を前提に考えるのではなく、重要な観光地のひとつだということを念頭においてほしい」と不安を隠せない様子の住民もいた。釣りや潮干狩り、昔から魚が採れ、島の人にとっても憩いの場所でもある。

近年、町おこしなどにも積極的に活用されているインスタグラム。投稿数で宮古島の観光地を調べてみると、最も人気なのは「伊良部大橋」で42,758件。(2018年12月22日現在) 2位は「与那覇前浜」の40,734件、そして3位に下地島空港・17エンドで、36,887件。

沖縄で最大級の環礁、言葉では表現できないほどの美しい海に囲まれた下地島空港。周回道路を含めた下地島空港そのものが、一大観光地になっているという世界的にみても稀なケース。
「下地島空港と近くの通り池周辺を自然公園とする一体ビジョンを考えている」(座喜味一幸・沖縄県議会議員)






下地島空港の周回道路から見える風景



空港周回道路の通行止が、もし現実になるようなら、観光客、観光業者、宮古島や17エンドに魅せられているファンやリピーター、島の住民からも反対意見が出ることは間違いないだろう。すでに宮古島観光協会や空港ターミナルを運営する下地島空港エアポートマネジメントにも、問い合わせや通行止にしないでほしいとの意見が寄せられているという。
沖縄県にとって、観光は最重要産業と位置づけられている。いっぽうで安全面を考慮したい下地島空港管理事務所としては、難しい判断を迫られている。進入表面や電波の通り道にかからないよう、車高の高い車のみ通行禁止とする、全車両通行止としても人や自転車は通行可とするなど、安全を確保しつつ、観光客から美しい風景を見る機会を奪わずに済む方法があるのではないだろうか。沖縄県下地島空港管理事務所がどう判断し、どのような決定を下すのか、注目したい。




下地島空港17エンド

17エンドへ向かう空港周回道路は2019年3月23日から車両通行止になりました。歩行者は入ることができます。






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