下地島空港の現況。
就航するエアラインは・・・
(取材・イタリア5NETWORK 沖縄臨時支局 / 2018・10・15)
下地島空港
~下地島空港の現況~
下地島空港には滑走路両端にILS(計器着陸装置)が設置されている。精度によってカテゴリーが分かれ価格も違うが、一式20億円から80億円もかかる高価な設備。JAL、ANAのために作られた訓練空港ならではの設備である。2018年7月、滑走路35用のILSが台風で損傷し、設備ををまるごと撤去することとなった。もう片方の滑走路17用は昨年から故障しており、腐食など老朽化も激しいために外した35の設備を改修し17用に設置する作業が行われている。
下地島空港のILS (計器着陸装置)
現在、海上保安庁の訓練は頻繁にあるが航空局や琉球エアコミューターは一定の訓練過程が終了した時期と思われ、ほとんど訓練がない。JAL、ANAが撤退した理由は訓練使用料が高額なためだが、具体的にどの程度高いのだろうか。
下地島空港の着陸料は沖縄県が管理する他空港と比較すると平均的。しかし、訓練での使用となると高額になってしまう。その理由は沖縄県が設定している料金体系にある。他空港で訓練を行う場合、一日の訓練ごと、期間の訓練ごと、包括的な料金や割引料金が設定されているケースは多い。しかし下地島空港の場合はタッチアンドゴー1回につき、いくらという料金設定となっている。ANAが訓練を行っているセントレアの場合、エアバスA320の着陸料は1回につき、約13万円。これは定期便の着陸料で、訓練使用料は非公開ながらも別に割引料金が設定されていると思われる。JALはB767、B737-800の訓練をグアム空港で行っているが、こちらも非公開ながら使用料は安い。かつてグアム空港は航空会社が次々に撤退したことがあった。そのため着陸料を無料するなど積極的なエアライン誘致活動を行い、V字回復をした経緯がある。下地島空港で訓練を行ったバニラエアの場合、エアバスA320の着陸料は1回につき、約20万円。訓練期間中のタッチアンドゴーの回数は約100回、使用料金は2000万円にも及ぶ。
以下、地元紙の記事より。
「バニラエアの五島勝也社長らが、宮古島市役所に下地敏彦市長を訪ね下地島空港で3日間実施する実機訓練に理解と協力を求めた。バニラエア側は、今後も継続的に利用するためにも、下地島空港の利用料金の見直しについても協力を求めた。五島社長は「県にも協力を求めているが、空港の使用料が通常国内空港は1日当たりで発生するが、下地島空港は1回の離発着で料金が発生する仕組みになっていて料金が予想よりも大幅に上回る。ぜひ、この計算方法を見直してほしい」と要望した」 (2017年10月4日 宮古毎日新聞)
「バニラエアの五島社長は、「下地島空港では去年の秋から3回訓練を行い、非常に効果が上がっているが、使用料の負担が大きい。以前からお願いしてきたが、ぜひ軽減の実現をお願いしたい」と述べた。これに対して、沖縄県の謝花副知事は「沖縄自動車道では、運賃を下げても利用が増えたら運営は改善した部分があった。多く利用してもらうことで一定の収益が上がる。検討を指示している」と応じた」 (2018年5月15日 宮古毎日新聞)
下地島空港で訓練を行ったバニラエアA320
~就航するエアラインは~
2019年3月30日にオーブンする新ターミナル。三菱地所、沖縄の建設会社・國場組と総合商社の双日が共同出資した「下地島エアポートマネジメント」がターミナルを運営する。エアラインの受け入れ窓口は空港管理者の沖縄県。さまざまなな噂はあるが実際に就航するエアラインはどこだろうか。
10月15日、ジェットスターが成田-下地島に就航することが発表された。初便は4月1日以降になると思われる。1日1往復、機材はA320。
バニラエアは下地島空港で訓練を行った実績があることから、就航するのではないかとの噂は多い。2019年にタッチアンドゴー訓練が検討されているが、下地島空港以外での訓練も考えられる。また2020年までにピーチとの統合が決まっていることから今後の運航計画が変わっていくことが予想される。果たして下地島への就航はあるのか、現時点では不明である。
スカイマークは2020年までを目標に石垣、宮古、下地島への就航をを検討すると発表した。新ターミナルのオープンは2019年3月だが、その時期に間に合わずとも今後下地島に就航する可能性はある。その他の国内線エアライン、JAL、JTA、RAC、ANA、スターフライヤー、ソラシド、春秋航空日本についての情報は今のところ入っていない。
下地島空港で地上ハンドリング業務を行う会社「鈴与エアポートサービス」が2017年に設立された。隣の伊良部島に社員寮も建設中。鈴与は静岡県に本社のある大手物流会社である。下地島空港のハンドリングを受け持った以上は旅客機が就航しないと利益はあがらない。そうなると鈴与の子会社で、毎年宮古島へチャーター便を飛ばしているフジドリームエアラインズ(FDA)が就航する可能性があるかもしれない。2014年から宮古島にチャーター機を飛ばしているFDA。2016年11月から2017年3月は100便、今年は2月から3月の間に44便を運航している。これら宮古島発着のチャーター便はすべて下地島発着となることも予想される。
下地島空港の上空で遊覧飛行をするフジドリームエアラインズのエンブラエルE170 (2016年12月23日撮影)
2018年7月、香港航空(Hong Kong Airlines)が下地島空港でのタッチアンドゴー訓練を計画。香港航空は香港-那覇間にも飛んでいることから、下地島空港は立地的に、また訓練の環境も最適とのことで、2018年9月に香港航空の担当者3名が沖縄県下地島空港管理事務所を訪れた。結果は下地島空港の訓練使用料金が想像以上に高額だったため、香港航空は予算的な面で断念せざるを得えず、香港航空の担当者たちは落胆し、帰国していった。訓練での使用は断念した香港航空だが、下地島空港への定期便就航には強い興味を持っているという。
国内線、国際線、LCC・・・この機会に国際的な航空情勢を踏まえた積極的かつ現実的な誘致活動を沖縄県に期待したい。
香港航空のA320。他にA330、A350などを保有している