海から17エンドを見てみよう



17エンドにいると、誘導灯付近に船がいるのを見かける。ダイビングスポットは環礁の外にある白鳥崎あたりに集中していて、ダイビングショップの船が昼食の休憩のためにダイビング客を乗せ、17エンドの環礁の中でランチをする。海からの景色はさぞ美しいものだろう、一度は見てみたい。そう思った方も少なからずいるのではないだろうか。

17エンドの環礁の中には佐和田漁港がある。ここから出発すれば、誘導灯はすぐ目の前。一度だけ、伊良部島の知り合いから知り合いへと話を伝えてもらい、佐和田漁港から船を出してもらったことがあった。10分ほどで誘導灯付近まで行けること、多少の波があっても環礁の中なので船の航行に支障がないのは便利だった。支払った代金は2万円。燃料代と人件費を考えれば妥当な金額だろう。ふだんは農業をされている方だったので、スケジュール調整が最も難しかった。空いているという日に限って環礁側から飛行機が来ない北風だったり、波が高かったり、天気が悪かったり。また条件が整ったと思い、お願いすると畑仕事が忙しく、船を出すのは難しいという日もあった。地元の伊良部島に友人・知り合いがいて、いつでも船を出せるという人は話は早いだろう。しかし、そんな知り合いはなかなかいない。そこで、ゼロの状態から誰でも行ける方法を探してみることにする。




17エンドはリーフの中にある。(クリックすると大きな画像)


17エンドにいた時、ふと気がついた。誘導灯の先には船が止まっている。そうだ、あの船に乗せてもらうことはできないだろうか? ダイビングショップはたとえ乗せてもらったとしても、あちこちポイントを回るから無理か・・・。昼の休憩も17エンドに行くとは限らないだろう。ならば、毎日のように17エンドに行く船はないか? ダイビングではなく、シュノーケルのツアーはないだろうか? 検索してみると、「17エンドでシュノーケル」 というツアーをやっている伊良部島のダイビングショップがあった。シュノーケルツアーの船に乗せてもらうことは可能か? と相談したところ、快諾してもらえた。シュノーケルの時間が余った時は、誘導灯のすぐ近くまで行くこともできるとのことだった。

伊良部島マリンセンターの船長、東浦さんから話を聞かせてもらった。船が毎日出ていて、17エンドに毎日行っているのであれば、好きな時に乗れて便利、と思っていたが実際は問題点があった。それは気象条件。風の強い日、波が高い日は外海からリーフの中に入れないという。出入り口が難所で、例えリーフの中が穏やかでも、外海は波やうねりがあり、船が入ることができる日は限られているという。船がリーフの中に入っているのを見たことは何度もあるが、言われてみると、毎日のように船はいない。冬場はほとんどおらず、夏でも船がいることは多いわけではない。

夏の観光シーズンだったのでシュノーケル客は連日いるようだった。飛行機が17側から進入する南風の予報の日を選び、乗せてもらうことにした。前日に確認の電話、明日は風が強いので中止。別の日を予約したが、その日は北風の予報で仕方なくキャンセル。こんなことが何回か続き、やっと5回目で船に乗ることとなった。その日の朝、船長の東浦さんは17エンドへ海を見に行き、双眼鏡でリーフの中や出入り口の様子を確認、出航を決めたとの連絡をもらった。







17エンド・シュノーケルツアー、この日の参加者は2名。料金はひとり9000円(税別)。出発は伊良部大橋の宮古島側にある港、トゥリバー港から。朝8時30分に集合、8時45分頃に出発。所要時間は片道40分程度。この日は晴れていたが雲が多い天候、風速は3-4m程度、穏やかな日で波も高くない。伊良部大橋を左にみて、船は伊良部島の佐良浜へと進む。かつてのフェリーが通っていた航路である。船の時代を知っている人にとっては懐かしく、初めて見る方は新鮮に映るだろう。佐良浜の街並みを海から眺める。昔は白い建物が多く、エーゲ海の街のようだとも言われたが、今は斜面に立ち並ぶ建物の色は混在していて、独自の雰囲気を醸し出している。

佐良浜を超えると、高い崖が続く。三角点やフナウサギバナタも見える。そして17エンドの環礁へ。環礁が削られて、船が航行できるようになっているのは一箇所のみ。問題の出入り口である。外海の濃く深いブルーとリーフの中の明るい水色、色は混じり合い、ところどころに渦を巻いている。想像以上にうねりのある場所だった。晴れていて、風も強くなく、波もあまりない状況にもかかわらず、船が進むと、波しぶきがあがる。この出入り口だけが嵐の中のようだった。過去にここで転覆した船もあるという。気象条件が揃わないとリーフの中に入るのは難しいという船長の言葉通りの場所だった。


17エンドのリーフの出入り口



船長の東浦さん。17エンドの環礁の中へと船を進める


船は17エンドのリーフの中に入った。波はほとんど無い。シュノーケリングのポイントは決まっているという。ふだん、陸地から17エンドを見ていると、まさかこんな場所があるとはまったく考えられないほど、生き生きとした珊瑚が多く存在していた。船がゆっくりと進む間、ウミガメを見ることができた。17エンドの環礁の中にウミガメがいるとは知らず。美しいブルーは別世界。





9時半頃に到着し、シュノーケリングが始まる。ポイントに錨を下ろしているので、船は動かない。陸上から誘導灯の真ん中に立ったとすると、誘導灯のナナメ左、環礁と誘導灯の中間くらいに船は止まっている。午前だと逆光となり、撮影は厳しい。誘導灯の反対側に行ってほしいが、シュノーケルツアーに ついでに乗せてもらっているという状況のため、あくまでシュノーケルが優先。もしも時間が余ったら、誘導灯に近い位置まで船を動かしてくれるとのことだった。


シュノーケリングのポイントから撮影。午前は逆光



誘導灯の先端を廻り、反対側へ


シュノーケリング客が戻ってきたのは10時半頃。船長が誘導灯の先端を廻って、船を反対側へ進めてくれた。シュノーケルツアーに参加した方も一緒に、誘導灯の真下で見物することとなった。時間は15分ほど、キャセイパシフィックのタッチアンドゴー2回とジェットスター成田便の到着を見ることができた。環礁の中は外海と比較すると、当たり前ではあるが波は高くない。無風状態の日は海底が見え、美しい。特に誘導灯付近は陸地に近い場所とは海の色が異なり、明るいブルーに輝いている。飛行機の腹部に反射する色も、このあたりを飛行する時が最もキレイに映る。


色補正はしておらず、撮ったままの色


17エンドのリーフの中に入り、いつもとはまったく違う視点で17エンドが見られたのは貴重な体験だった。行き帰りは伊良部大橋や佐良浜の街並み、伊良部島の北側の断崖、普段は見ることができない海からの風景に感動した。宮古島のトゥリバー港に戻ったのは11時半頃、約2時間半ほどの十分に価値ある"船旅"だった。





タッチアンドゴーの訓練がなかったり、またシュノーケリングツアーの都合で逆光となる場所にしか行けなかったとしても、17エンドのリーフの中に入るだけで十分に満足できるとは思うが、より確実に撮影を行いたいのであれば、シュノーケルツアーに乗せてもらうのではなく、船をまるごとチャーターするという方法もある。今回利用した伊良部島マリンセンターのシュノーケリングツアーの最少催行人数は2名。誰も参加しない日を選択し、2名分の料金18000円(税別)を支払えば17エンドに行ってもらえるとのこと。

伊良部島マリンセンターのwebサイト

宮古島に住んでいる方は気象条件があえば、ツアーに便乗してリーフの中に入ることは比較的容易だろう。観光や飛行機撮影が目的で来られる方は限られた日程の中で、タイミングがうまくあえば良いのだが、6月下旬の梅雨明けから7月、8月くらいまでが、すべての条件が整う可能性が高い。訓練機の17側からの進入は初夏から夏にかけて、このシュノーケリングツアーの開催時期は3月から10月まで、冬場は北風が強く、リーフの中に入るのは難しい。海から見る17エンド、気象条件等は運次第という面もあるが、トライしてみる価値はあるかもしれない。



取材・イタリア5network 沖縄臨時支局 / 2019・9・5